日本が世界で勝つために

DTC特任上級顧問 岡田武史 vs DTC代表執行役社長 近藤 聡

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サッカー日本代表チーム監督やFC今治オーナー等、日本のサッカー界を牽引する立場にいながら社会貢献活動にも率先して参加する岡田武史と、著しい変化と成長を遂げるコンサルティングファームの先陣を切る近藤 聡による2トップ対談。『グローバル』『世界で勝てる個人の資質』『社会課題』というキーワードから、この時代の最前線に立つ二人のフィロソフィをひもとく。

Q1:“グローバル”という言葉から受ける印象は?

二度のサッカー日本代表監督、その後の海外クラブチーム監督というスポーツ界のグローバル体験を通じて岡田武史が日本人を案じるのは、日本独特の美学に対するこだわりだった――

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日本人の特徴を生かした技術を生み出したときには世界を席巻できる

岡田 サッカーで言えばそこで勝つ、という意味です。どうすれば日本が世界で勝てるかというと、少なくとも他の国と同じことをやっていてはダメで、古いたとえになるけれどバレーボールなら回転レシーブのように、日本人の特徴を生かした独自の技術を生み出したときには世界を席巻できるんですよね。

近藤 ビジネスの側面から捉えたグローバルは、日本の技術力でつくったものを海外市場で売るということです。となると欧米の巨大企業と張り合うわけですから、日本国内の競合と争っている場合ではなくなる。グローバルで戦うにはそういう視点や覚悟が必要になってきます。

岡田 日本人の特徴を考えると、まず組織に対する忠誠心が強く、 手先が小器用で繊細な技術が得意。それは工業製品もサッカーも同じでね。ただし広いスペースでサッカーをやらせるとパスミスが多くなるんです。だから常に相手の近くまで走り寄ったコンパクトなプレーを心掛ける。1試合を通じてそれを継続するには相当な体力が必要だけど、日本人ならできるんですよね。サッカーは1試合で約10キロ走りますが、一人ひとりがあと1キロ走ればフィールドプレイヤー11人で戦える計算になるでしょう。これは個の身体能力が劣る日本人ならではの戦法ですね。そしてまた、弱点を共通認識できれば組織だった動き方ができるというのも日本人の特徴です。

近藤 日本人は暗黙の了解で統率が取れますからね。秩序だった東京の街並みにも外国人は必ず驚きます。こんなにクリーンな場所はないと。その一方で、個人レベルとなると独創性が乏しく、アイデアではまだまだ勝てません。変わった人間が出にくいのと同じで、iPhoneのような製品はなかなか日本のメーカーでは生まれにくい。生真面目過ぎるんでしょうね。仕事で帰結してしまう。その先の目的がなかなか見つけられない。そんな意識の中から独創力を磨くのは難しい。民族の単一性や島国という地形も関係していると思いますが。

グローバルでは腹を割る覚悟がないと誰も信用してくれない

岡田 これは必ずしも弱点とは言えないけれど、日本人は美学を大切にしすぎるんですよね。人が生きていくためには哲学やポリシーは大事。でも、武士道に代表される日本人特有の美学は時に逃げの言い訳になる。代表メンバーの中から「俺たちのサッカー」なんて言葉が出てきたときはまずいと思いましたよ。

近藤 それが叶えば負けてもいいなんて思われちゃ勝負になりませんよね。やはり日本代表監督は厳しい仕事でしたか?

岡田 この人生、まったく挫折ばかりだけど、さすがに1回目の日本代表監督は、それはもうかつて経験したことのないプレッシャーに襲われましたよ。スタジアムではイスを投げられる。家では脅迫電話が鳴りっぱなし。自宅の前には24時間パトカーが停まって警護に当たっている。子供はテレビで責められる僕を見てわんわん泣く。僕自身も物を投げたりする。すべてメチャクチャ。もう耐えられないと思いましたよ。でも、逃げることもできない。

近藤 我々の想像を超えた壮絶さですね。

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岡田 でも、最終決戦の前日という土壇場になって、ここまで来たら自分が持っている力を出すしかないと開き直ることができた。そういう修羅場をくぐり抜けたら、もうどんなことにも格好つける必要はないんだと、むしろ肩の力が抜けてね。その経験は中国の監督時代にも生きて、チームワークの大切さを知らない選手たちには徹底してサッカー哲学を語り続けました。過去の自分の経歴など振り返らず、腹を割って真剣に本心を伝えた。かつて一度も勝てなかったチームに1年半かけて勝利したとき、彼らがやっと言ってくれましたよ。「チームって最高ですね」と。

近藤 ビジネスでも同じです。より競争が過酷なグローバルでは腹を割る覚悟がないと誰も信用してくれませんから。

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