ルール形成戦略はグローバルで勝ち抜く最強のレール

グローバルに臨もうとする日本企業が常に苦戦するのは、諸外国が先んじて制定するルールに対して、受動的な姿勢から脱却できないことに理由がある。
それこそが根本的に解決すべき社会アジェンダと悟った國分俊史は、水素活用による持続可能なエネルギー社会実現案件の経験を踏まえ、
『ルール形成戦略研究所』の創設に動いた。さらに大学の協力を得て日本初のMBAルール形成戦略コースも設立。
アカデミックな機関に踏み込むというかつてない展開を創造しながらも、「DTCのコンサルティングの軸からぶれていない」と発言する根拠とは―。

國分 俊史 Toshifumi Kokubun
執行役員兼デロイト エクスポネンシャル カンパニー ヴァイスプレジデント パートナー
ルール形成戦略研究所所長 多摩大学大学院教授

DTC以外のファームには真似できないルール形成戦略

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 DTCの社会課題への取り組み(いわゆる社会アジェンダ)で、2016年末時点における最新のトピックスは、同年6月に多摩大学で創設された『ルール形成戦略研究所』の支援だ。この研究所の所長兼教授を務めるのがDTC執行役員の國分俊史。同じく執行役員の羽生田慶介は客員教授としてメンバーに加わっている。
 それに併せて多摩大学大学院では、MBAルール形成戦略コースを設立。奨学金制度のサポート等をDTCが行い、2017年度の入学希望者を募ることになった。このコースに限り、通常は社会人経験3年という必須入学資格と取り払い、大学新卒者という若い世代からでもルール形成戦略を学べる募集要項に改めた。すべては國分たちの発案だ。
 ルール形成戦略とは何か?その説明は、『ルール形成戦略研究所』の教授たちが編著に携わり、2016年11月に出版された『世界市場で勝つルールメイキング戦略 技術で勝る日本企業がなぜ負けるのか』の、國分が記したまえがきの冒頭を引用するところから始めたい。

革新的なイノベーション、社会課題解決型事業モデルへの変革が、グローバル市場での成長に不可欠であるという認識は共有されているだろう。しかし、すでに20年近く、日本から世界を変えた巨大なイノベーションは誕生していない。

 日本から巨大イノベーションが生まれない原因は、高度な技術開発は得意でも、経済発展を内包した真のイノベーションとするために不可欠な、既得権益の抵抗や規制当局との議論を制するルール作りに対して、いまだ受動的な日本企業の姿勢にあると國分は言う。
 「グローバルで勝ち抜くルール形成戦略の力学を読み解く上で日本に欠けているもののひとつに、安全保障経済政策があります。欧米では、安全保障と経済政策は常に一体でとらえられており、企業経営者もそうした視点から戦略を考える素地ができている。しかし日本ではこれらが分離され、安全保障であれば外交と防衛の専門家だけで対処しようとする。経産省や企業が立ち入る問題とは考えられていない。だから、国際政治や外交で扱われるテーマとビジネス上の利害とが密接に結びついているという感覚が、国全体で見渡しても非常に希薄なのです。
 こうした状況を打開するためにも、ルール形成戦略を学問として体系化し、ルール形成戦略に長けた人材を育てなければならない。大学というアカデミックな機関と協力して。そこにDTCが踏み込めたことには大きな意味があります。大学院では、ルールメーカーである政治家の育成も行います。それが果たせれば、ルールメイキング最強のレールを敷くことになります。とはいえ”政産官学”の一体化は、欧米でははるか以前から当然のように行われているんですけどね」
 グローバルの当然が通用しない。これは、日本企業をサポートするDTCが常に悩まされてきた壁だ。國分たちには、全世界150を超える国・地域にまたがる拠点と約22.5万人を擁するデロイトのネットワークがある。その間では国際的なルールに関する積極的な情報交換が行われ、日本のDTCがルール形成戦略を実行する手段や方法を用意することもできた。しかし、最終的な決断をするクライアントがためらってきた経緯がある。
 「そこに行きつくたび疲弊するんですよ。もちろん日本企業の中にもルール形成戦略に興味を示すところがありますが、社内でそれを実行できる部署がない。だからウチに転職してくれと言われても、それで日本企業全体が抱えている問題が解決するわけでもない。そんな状況下でチャレンジしたのが、水素技術の活用による持続可能な社会実現という社会アジェンダでした」

 DTCは2013年6月に設立された『FCV(燃料電池自動車)を中心とした水素社会実現を促進する研究会』に参加する民間企業側の事務局を担当。それと前後して国会議員と繰り返し議論を交わし、監督官庁と企業を巻き込みながらルール形成に奔走したのが國分だった。その努力は、2014年4月に閣議決定された第4次エネルギー基本計画の第3章 第8節 3項に「”水素社会”の実現に向けた取組の加速」が盛り込まれたことで一つの結実を得た。さらに國分は、国連気候変動枠組条約に基づくCOPでの水素活用に関する条約締結に向け、民間外交やダボス会議でのアジェンダセッティングなど、今度は各国の政治家を巻き込んだ国際合意の機運をつくり出すために動いた。そこまでしないと日本発の水素社会をグローバルで提唱できないと考えたからだ。
 「我々が挑んだのは、これまでにない市場を含む環境づくりでした。そこにクライアントを呼び込めば持続的なビジネスが可能になる。水素関連は、他のファームには真似できないルール形成戦略がDTCならできることを証明した案件と言えるでしょう。

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